広島市サッカー場、具体案づくりのポイントは

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広島市サッカー場、具体案づくりのポイントは
2019/10/17

広島市などが候補地を検討する段階で示したサッカースタジアムのイメージ

　広島市が中央公園自由・芝生広場（中区）へのサッカースタジアム建設に向け、具体案づくりを本格化させた。有識者から意見を聴く会の初会合を近く開催。募集した市民のアイデアも踏まえて、市は広島県、広島商工会議所とともに本年度末をめどに基本計画をまとめる。議論が求められるスタジアム本体と周辺整備の２点でポイントを整理する。

　▽スタジアム本体　多機能型、幅広い選択肢

　本拠地とするＪ１サンフレッチェ広島の公式戦は年に２０試合程度にとどまる。プロ野球の公式戦が約７０試合あるマツダスタジアム（南区）との差は大きい。市は試合のない日も活用できるよう多機能型のスタジアムを目指す。スタンド下に約７千平方メートルの空間ができると想定し、この使い道が最大の論点となる。

　市によると、Ｊ１の本拠地で空きスペースを利用する先行例は鹿島アントラーズのカシマスタジアム（茨城県鹿嶋市）ぐらい。スポーツジムやエステ店を備え、コンコースでビアガーデンなどイベントも開く。

　市は、さらに参考例を求めて年内に海外の先進地を視察する予定だ。欧州では多機能型が主流。Ｊリーグが２０１７年に１１施設を視察した報告書によると、ドイツ・デュッセルドルフの本拠地はホテルや展示場を併設し、企業が会議やセミナーで利用する。大半のスタジアムがレストランやグッズショップ、商談や接待に使うラウンジを備える。

　これら「多機能」の選択肢は幅広い。ただ、広島市のスタジアムは中央公園内に建てるため、営利目的の活用は都市公園法の制約を受ける。飲食店やショップなどは併設できるが、公園を訪れる人たちの利便性をアップさせることが条件になるという。

　例えば、大型観光ホテルやショッピングモールなどの大規模な商業施設の建設は難しい。北山孝文スタジアム建設担当課長は「周辺の商店との競合にも配慮が要る」と話す。

　市は今月１～１４日に実施した市民アンケートで尋ねた「導入してほしい機能」の選択肢に、飲食店やジムのほか、ボルダリング施設、スポーツミュージアム、温浴施設を提示。図書館などの公共施設や会議室、多目的ホールも加えた。現実的に建設できる施設を踏まえた。都市の緑化や住民に憩いの場を提供する「公園」の機能と、スタジアムの調和を図る計画づくりがポイントになる。

　▽周辺整備　複合開発検討、にぎわう場に

　周辺の複合開発も焦点となる。市の想定では中央公園広場（７・９ヘクタール）のうち３・２ヘクタールをスタジアム用地とし、残り４ヘクタール余りはオープンスペースになる。市は日常的に市民や観光客でにぎわう場にする方向で検討している。

　先行例として注目するのは大阪市の市街地にある天王寺公園だ。民間業者に一部エリア（約２・５ヘクタール）の整備と運営を委ね、１５年に「てんしば」としてリニューアルした。芝生広場にカフェや雑貨店、産直市、室内遊戯場など１４施設を整備し、昨年度は約４４０万人が訪れた。市観光課は「親子連れや若者でにぎわい、業者から公園の使用料も入るようになった」と話す。

　広島市は市民アンケートで中央公園広場に導入してほしい機能を問う選択肢として、飲食や物販のほかにランニングやサイクリングの拠点、フットサル施設、子どもの遊び場、バーベキュー施設などを並べた。

　市と県、商議所は５月にまとめた基本方針でスタジアムを平和発信の拠点▽幅広い世代が楽しめる施設▽にぎわいの拠点―とするとしている。このコンセプトを踏まえ、来年１月にも基本計画の素案をまとめる。

　元Ｊ１浦和レッズ社長で広島経済大の藤口光紀教授（スポーツビジネス）は「行政と市民が一緒になり、スタジアム整備に広島ならではのアイデアを入れてほしい」と幅広い議論の高まりに期待を寄せる。（永山啓一）

　＜クリック＞サッカースタジアム建設の基本方針　広島市、広島県、広島商工会議所の３者が５月にまとめたスタジアム建設に向けた基本的な合意事項。観客席３万人規模のスタジアムを中央公園自由・芝生広場（中区）に建設し、２０２４年の開業を目指すとした。試合のない日も含め年間を通じて多くの人を呼び込むため、多機能化や周辺の再整備を進めると明記。基本計画の検討にはサッカー関係者のほか、広く市民の意見を聴くことも盛り込んだ。